留学ビザから就労ビザへの変更手続きの必要書類とポイント【入管専門行政書士】
留学ビザを取得している外国人が、大学院、大学、短期大学、専門学校を卒業して、帰国することなくそのまま企業に就職する場合は、留学ビザから就労ビザへの変更手続きが必要となりますので、卒業後、日本での就職が決まった人は、留学ビザから就労ビザへの変更手続きの準備を速やかに始めてください。
目次
具体的な手続き
留学ビザから就労ビザへの変更手続きの正式名称は、「在留資格変更許可申請」と言います。
この在留資格変更許可申請を、外国人ご本人の住所地を管轄する出入国在留管理局(通称 入管)に行います。
注意点は、就職する会社の所在地ではなく、外国人ご本人の住所地を管轄する出入国在留管理局というところです。
例えば、東京にある大学を卒業(東京都、神奈川県、埼玉県などに在住)し、愛知県名古屋市の会社に就職するような場合、在留資格変更許可申請をするのは名古屋出入国在留管理局ではなく、東京出入国在留管理局となります。
外国人ご本人が申請手続きをする場合は、間違えることも少ないかと思いますが、就職先企業様が主導して申請手続きをするような場合は、ついつい間違えやすくなってしまうので、注意が必要です。
必要書類
まず覚えていただきたいのが、取得したい就労ビザの種類によって必要書類は異なります。
これは、留学ビザから就労ビザへの変更手続きと一言で言っても、「技術・人文知識・国際業務」、「高度専門職」、「特定活動46号」、「特定技能」など、留学ビザから変更したい就労ビザの種類は複数存在し、各就労ビザの活動に応じた書類が必要となるからです。
また、同じ就労ビザの種類であったとしても、就職する会社の規模や業種によって、必要書類は異なります。
例えば、同じ大学を卒業し、留学ビザから「技術・人文知識・国際業務」の就労ビザに変更したいAさんとBさんがいたとします。
Aさんは、X社に就職、BさんはY社に就職が決まりました。
このような場合、AさんとBさんでは必要となる書類が異なる場合があるということです。
では、具体的にどのような書類が必要となるのか、留学ビザから就労ビザへの変更手続きで多い「技術・人文知識・国際業務」、「特定活動46号」、多くの会社が該当する会社規模等カテゴリー3の必要書類を見ていきましょう。
ちなみに会社は、カテゴリー1~4に振り分けられます。
数字が小さくなるにつれて、会社規模が大きい、信用があるというイメージです。
そのため、数字が小さい方が必要書類も少なくなります。
技術・人文知識・国際業務
□就職する会社の前年分の源泉徴収票等の法定調書合計表の写し(受付印のあるもの)
※電子申告をしている会社の場合は、受付印に代わる受信通知内容という書類も必要となります。
□就職する会社の直近年度の貸借対照表、損益計算書、販売費及び一般管理費の写し
□就職する会社の発行から三ヶ月以内の履歴事項全部証明書(会社登記簿謄本)
□就職する会社の会社案内(ホームページの写しでも大丈夫です)
□雇用契約書や内定通知書などの雇用条件が確認できる書類の写し
□外国人ご本人の履歴書の写し
□卒業証明書または卒業証書の写し(大学院、大学、短期大学、専門士取得の専門学校)
以上が技術・人文知識・国際業務の就労ビザへの変更手続きに必要な書類となります。
特定活動46号
特定活動46号は2019年5月に新しく認められた就労ビザとなります。
必要書類は、「技術・人文知識・国際業務」の必要書類に下記の書類がプラスとなります。
※日本の大学院、大学を卒業した場合の就労ビザとなりますので、本国や海外の大学院、大学は対象外となります。
□日本語能力試験N1の合格証明書またはBJTビジネス日本語能力試験480点以上獲得の証明書
以上が特定活動46号の就労ビザへの変更手続きに必要な書類となります。
技術・人文知識・国際業務の具体的な仕事
留学ビザと違い、技術・人文知識・国際業務の就労ビザと言ってもなかなかイメージできないかと思います。
では、技術・人文知識・国際業務の就労ビザに該当する具体的な仕事には、どんな仕事があるのでしょうか?
下記のような仕事が代表例となります。
□IT企業のシステムエンジニアやプログラマー
□自動車製造業や金属加工製造業などの製造業の工場で働くマシンオペレーター
□半導体製造工場などの製造技術者
□飲食料品製造業などの生産管理者
□航空宇宙開発などの開発者・設計者
□貿易業務や海外事業に携わる者
□英会話、中国語、韓国語など、民間の語学学校・教室の語学講師
□経理・人事、営業などの総合職
□通訳者・翻訳者
□語学力を必要とする携帯電話会社や旅行代理店などの社員
以上が代表例となりますが、○○業でなければならないという業種で拘束されるようなものではありません。
業種ではなく業務内容が重要となりますので、コンビニなどの小売業、ラーメン屋などの飲食業でも技術・人文知識・国際業務の就労ビザを取得できる可能性はあります。
現実、弊所ではコンビニやラーメン屋での取得実績がございます。
特定活動46号の具体的な仕事
特定活動46号は、従事する業務の中に、技術・人文知識・国際業務に該当する業務が含まれていることが要件の一つとなっています。
そのため、技術・人文知識・国際業務の具体的な仕事で紹介したような業務が、業務中のどこかで発生する必要があります。
ただ、業務中のどこかで発生すればよく、主業務が単純労働に該当する場合でも就労ビザとして認められます。
例えば、部品工場の組立作業員として就労ビザを取得することはできませんが、工場に外国人技能実習生が在籍しており、技能実習生に指導するときの通訳業務も行うということであれば、通訳業務は技術・人文知識・国際業務に該当する業務ですので、就労ビザを取得できる可能性があります。
ここが、特定活動46号と技術・人文知識・国際業務の大きな違いです。
当然のことですが、技術・人文知識・国際業務は、技術・人文知識・国際業務に該当する業務を主業務とする就労ビザですので、適切な業務量が求められます。
以上のことから、業務中に技術・人文知識・国際業務に該当する業務が発生すれば業務内容は問われないため、具体的な仕事の例はないということになります。
就労ビザを取得するためのポイント
留学ビザから就労ビザへの変更手続きは、外国人ご本人の住所地を管轄する出入国在留管理局に在留資格変更許可申請という手続きをすると紹介させていただきました。
そして、在留資格変更許可申請をする際に必要な書類についても代表的な就労ビザである「技術・人文知識・国際業務」等を例に紹介させていただきました。
ということは、必要書類を準備して、管轄する出入国在留管理局に在留資格変更許可申請をすれば就労ビザを取得することができると思ってしまうかもしれません。
しかし、それだけでは留学ビザから就労ビザへの変更の許可=就労ビザの取得は厳しいというのが現実です。
なぜなら、上記必要書類は、「この書類揃えてくれたら受付しますよ。」という出入国在留管理局が受付をする、要するに出入国在留管理局に受付をしてもらう最低限必要な書類に過ぎないからです。
あくまで受付をしてもらえただけで、留学ビザから就労ビザへの変更が許可されたわけではありません。
許可・不許可の審査と受付は、別物です。
そして、許可を勝ち取るには、必要書類以外の任意書類の提出が重要となります。
重要なポイントなので、もう一度言います。
就労ビザを取得するには、任意書類の提出が重要となる。
ですから、留学ビザから就労ビザへの変更手続きをする際は、必ず任意書類を提出しましょう。
この任意書類の提出の有無、どのような任意書類を提出するかで許可・不許可の結果が変わると言っても過言ではありません。
正に運命の分かれ道です。
専門家であれば腕の見せ所です。
任意書類の意味
任意書類を提出しましょうって言われてもわからないですよね。
任意っていうだけあって○○の書類という断定したものではありませんが、簡単に言ってしまえば就労ビザを取得するために入管を説得する書類です。
と言われても、、、となりますよね。
なので、これだけは最低でも提出するべきという任意書類を紹介させていただきます。
1 理由書
専門家の中では、任意書類ではなく必須書類とも言われる書類で、簡単に言えば作文です。
ただ、作文と言っても好き勝手に書けばいいかと言ったらそうではありません。
下記のようなポイントがあります。
□留学ビザから変更したい就労ビザの資格該当性がある
例えば、従事する〇〇の業務は、技術・人文知識・国際業務に該当するので資格該当性がある
□許可基準適合性がある
例えば、○○大学で○○を専攻し、○○の学位を取得しており、従事する業務と学術的素養の関連性がある。月額給与も日本人と同等額以上である。
□相当の理由がある
例えば、業務増加で人手不足に陥っている
これが全てではありませんが、上記3点は最低でも書くことをおすすめします。
2 成績証明書や資格証明書
従事する業務に対する学術的素養や能力を裏付ける書類となるため、説得力が増します。
外国語文書の場合は、日本語訳文が必要です。
3 外国人ご本人の課税証明書・納税証明書
留学ビザの場合、出入国在留管理局に資格外活動許可という申請をすることで週28時間以内のアルバイトが認められます。
この資格外活動許可を得てアルバイトをしている場合は、週28時間以内のルールを守ってオーバーワークをしていないということを証明するために提出します。
時給はアルバイト先やご本人の能力によって異なるため、金額(年間所得)だけでオーバーワークの有無が判断できるものではありませんが、一般的な時給で計算すれば、おおよその年間所得がわかりますので、それを大幅に超えているような場合は、逆にオーバーワークの可能性があると疑われます。
そのため、年間所得が高いような場合は、出入国在留管理局の提出を慎重に判断する必要があります。
オーバーワークがある場合、相当な理由がなければ、就労ビザの取得は厳しくなります。
アルバイトの外国人留学生をそのまま正社員として雇用する場合も、掛け持ちでアルバイトをしていることがありますので、安心はできません。
任意書類は、各手続き内容によってオーダーメイドのように作成するものですので、上記3点が全てではありませんが、留学ビザから就労ビザへの変更手続きをする場合は、上記3点は提出するようにしましょう。
審査期間の目安
留学ビザから就労ビザへの変更手続きの審査期間は、平均で1ヶ月前後です。
平均ですので、必ずではありません。
就職する会社が大きい会社だと早くなったり、逆に小さい会社だと遅くなったりもします。
また、留学ビザから就労ビザへの変更手続きは、卒業シーズンに申請手続きが集中することから、他の時期と比較すると審査に時間がかかる傾向があります。
特に2月、3月は集中しますので、内定が決まっている場合は、11月の中旬頃から書類の作成や収集を開始して、12月末には管轄する出入国在留管理局に申請するのがおすすめです。
ただし、その場合、審査は進行しますが、結果が出るのは卒業後となります。
例外を除き、卒業して初めて就労ビザ取得の要件が揃うことになりますので、卒業したという事実が発生するまでは結果が出ることはありません(卒業直前に卒業証明書の提出を条件に許可の結果通知が届く場合はあります)。
いかがでしたでしょうか?
なんとなく留学ビザから就労ビザへの変更手続きに必要な書類やポイントがわかったと思います。
もし、いまいちわからないということでしたら、どこがわからないか教えて下さい。
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